2021年09月2日
[データ活用術]小売りチェーンの2店舗の比較
Vieurekaチーム
今回はある小売りチェーンの郊外店と繁華街に近い店舗(以下、都心店)の2店舗の来店客の傾向を比較します。曜日、時間帯、イベントデー、顧客属性の視点で見てみます。
まず、はじめに曜日ごとの来客人数をグラフにしました。この2店舗の場合、都心店の方が来店人数は総じて多く、都心店は平日と土日の差が小さく、郊外店は差が大きいことがわかります。土日祝は平日に比べて都心店で109%、郊外店で124%となっています。
次に曜日ごとの時間帯別で見ると都心店では平日18時以降の来店客が多いことがわかります。つまり仕事帰りの来店客が寄与し平日の来店客数を押し上げていると考えられます。
一方で、郊外店では土日の昼間の来店客が多く、平日と差を広げる要因となっています。
両店の共通点として、夜間は曜日に関わらず同程度の人数・推移になっています。
また都心店の平日の18時にピークがありますが、金曜日のみ約11%少ないのも興味深い結果です(図中の赤丸部分)。明確な理由はわかりませんが、金曜夜の会社員の行動パターンが他の曜日と異なることを示しています。
次にイベントデー(ポイント増額)の効果の比較です。この小売りチェーンでは月に数日のイベントデーがありますが、郊外店では137%、都心店では124%の集客に繋がっています。郊外店のほうが来店客の生活に密着しており、お得な情報に敏感なお客様が多いことが分かります。
都心店のイベントデーの集客の低さを課題として捉え手を打つのか、もしくは都心店はそういう特性ということで割り切り、郊外店での施策を手厚くしていくのかは、チェーン店の戦略次第です。
なお、このようにMicrosoft社PowerBI Desktopでご利用いただける弊社のテンプレートファイルでは、任意のイベント日を設定することで、イベント日とそうでない日の集客の比較が可能です。
最後に顧客属性(性別・年齢)で比較します。
郊外店では昼間帯で女性が多く来店されています。主に主婦層の方々が昼間に来店されていると推測されます。
10歳刻みの年齢層では比率の違いが顕著です。40歳代以下が郊外店で62%、都心店で92%です。さらに都心店では20歳代、30歳代の割合が非常に高く、夜中に多く来店していることがわかります。イベントデーの効果の考察と合わせて考えると、この世代の方々にとってはポイントの魅力が低い、もしくはポイントカードの所持率自体が低いのかもしれません。
郊外店では40歳代までの比較的若い世代が午後に来店し、50歳代以上の高齢層は午前中に多く来店されていることがわかります。
この結果から、各店舗の顧客属性を把握し、効率的なプロモーションを実施する、というような取り組みが可能です。例えば、郊外店のイベントデーの午前中は普段より高齢層の比率が高まると推測されるので、当該店舗で開店時からの高齢者向け店頭プロモーションの実施により販売を増やすことが出来るかもしれません。
1店舗だけの結果ではそれをどう評価していいのかわからず、「ふ~ん、なるほどね。」で終わってしまう可能性がありますが、複数の店舗の比較(相対評価)を行うことで、その店舗の特性や課題を浮かび上がらせることができます。
本例では曜日・時間帯・属性の軸で分析することで2店舗の特性の差異が浮かび上がりました。
今回は店舗の入り口に設置したカメラで得られたデータを元にしましたが、今後は、店舗内の売場に設置したカメラのデータも用いて売場への到達率や来店客の流れについても見ていきたいと思います。