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2024年01月17日

  • コラム

AIによる画像認識が抱える5つの課題|課題を理解した上で上手く活用するための対応策とは

AIによる画像認識が抱える5つの課題|課題を理解した上で上手く活用するための対応策とは

近年、私たちの身の回りにも導入が進んでいる画像認識の技術。AI技術の進化によって人間よりも安定した精度で分析が可能であるため、「万能」や「完璧」というイメージを持たれやすい画像認識ですが、実は課題が一つもない訳ではありません。

そこで今回は、「画像認識の課題を理解した上で導入を検討したい」「画像認識の仕組みを導入する際の注意点は?」とお考えの方に向けて、AIによる画像認識が抱える5つの課題について分かりやすく解説するとともに、それらの課題を解決するための対応策をご紹介していきます。

企業の課題を解決する画像認識の技術とは


画像認識とは、コンピューターや機械が画像に何が写っているのかを認識・分析する技術のことで、その仕組みは、私たち人間の脳がモノを認識する際の仕組みに似ています。

例えば、私たちが動物の動画を見た際、その動物の外見の特徴や行動パターンなどを自身の過去の経験や知識と照らし合わせ、その動物が「猫なのか」「犬なのか」を判断します。画像認識の場合は、この人間の脳が自然に行っている一連の処理をAI(人工知能)が機械的に判別して処理する仕組みとなっています。

なお、画像認識の仕組みや手法については、「AIによる画像認識の仕組みとは?基本的な知識から活用事例まで解説」や
画像認識にはどんな種類がある?画像認識における代表的な技術と活用方法とは」などでも詳しく解説していますので、ぜひ参考にご覧ください。

画像認識における5つの課題

画像認識における5つの課題

AIによる画像認識はその高い処理能力から、既にビジネスの分野や私たちの身の回りの生活でも大きな活躍を見せていますが、課題が一つもない訳ではありません。

では、一体どのような課題があるのでしょうか?
ここからは、AIによる画像認識において考えられる課題について、代表的なものを分かりやすくまとめていきます。

画像認識の課題①:適切な学習データを大量に準備する必要がある

AIを活用して画像認識を行う際の課題の一つに、適切な学習データが大量に必要になる点が挙げられます。

画像認識では、対象物を認識するために正解となる画像データをコンピューターに大量に学習させる必要があります。その画像も何でもいいという訳ではなく、画像認識の精度を上げるためには、角度や大きさ・明るさ・周囲の環境など、さまざまな条件のもとで撮影された適切な画像が偏りなく必要となります。

その大量の画像データを収集するのに非常に多くの労力やコストがかかるため、その点がAIによる画像認識の課題の一つとなっています。

画像認識の課題②:精度は100%にはならない

「万能」や「完璧」というイメージを持たれることも少なくないAI。確かに高い精度で処理を行うことは可能ですが、常に100%の精度という訳にはいきません。

誤認識や検出漏れともにゼロではありませんし、AIは学習した膨大な量のデータから自動的に計算し、最も合理的な判断を下すため、AIによって導き出された結果が人間の望む答えだとも限りません。さらに、学習データの質やアルゴリズムの設定などによってはAIの判断に偏りが出てしまう可能性もあります。

特に、AIによる画像認識では二次元画像(カメラで撮影した普通の写真・画像)を使用しますが、二次元画像では奥行きやカメラからの距離などの情報が失われてしまっており、それらによって画像認識の精度に少なからず影響が出てしまいます。今後の技術の進歩によって、距離情報が取得できるセンサー付きのカメラが一般的にも広く普及すれば、今よりも精度は向上するかもしれませんが、現時点では画像認識の技術には限界があるということを理解しておく必要があります。

画像認識の課題③:根拠がブラックボックス化する

AIによる画像認識には、根拠がブラックボックス化してしまうという課題もあります。

例えば人間が何かを判断する場合、何故その結論に至ったのか、その判断の根拠は何かなど、判断を下すまでの思考のプロセスを確認することができます。しかし、AIを活用する場合、膨大なデータを学習したAI自らが高度な計算によって答えを導き出すため、人間側で、「AIがどのような思考でそう判断したのか」という根拠を読み解くことが難しいのです。

もちろん単純なプログラムであれば、AIの判断基準を読み解くことはできます。しかし、膨大な量の複雑な処理プロセスが求められるケースにおいては、AIによる画像認識で導き出した結論が本当に合っているのか、またそれが最適なものなのかなど、人間が理解することが困難であることが多く、画像認識の内容によっては意思決定の判断材料として利用しにくい場合があります。

画像認識の課題④:プライバシーへの配慮

画像認識には、プライバシー保護にどう取り組むかという課題もあります。

画像認識の技術を活用する際には膨大な量の画像データを用いますが、特に顔認証や行動分析などを行う場合、その画像データの中には多くの個人情報が含まれています。AIで分析するだけで直接的な影響はないとしても、企業としてデータ収集を行うのであれば、プライバシー保護への取り組みがなされていないと、企業イメージが低下するだけでなく、信用問題にも発展する可能性があります。

また、AIで画像認識を行う際にはネットワークを経由してデータのやり取りを行うため、情報漏洩のリスクがある点も課題の一つだと言えます。情報漏洩は、外部からのハッキングはもちろん、内部の人間による過失、もしくは意図的に情報を漏洩させるケースもあるため、それらの可能性を踏まえた対策が必要となります。

画像認識の課題⑤:国の方針・規則に左右される

AIによる画像認識を活用する際、その個人情報の取り扱いなどが国の方針や規則に左右される可能性がある点も課題の一つだと言えるでしょう。

例えば、2018年5月にEU域内で適用開始された「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation以下、GDPR)」。このGDPRは、欧州経済領域内における個人データの保護を目的とした規則であるものの、領域内に支店や現地法人などが無い場合でも、領域内に所在する個人のデータをやり取りする場合は対象になっているため、日本国内の企業でも欧州経済領域内でサービスを提供する場合は、その規則に従う必要があります。

また米国においては、18都市で画像認識の代表的な手法である「顔認識」を禁止するという法律が制定されたものの、自治体によっては規制を部分的に撤回するなど、国の方針自体が統一されていないというケースもあるため、場合によっては「せっかく画像認識を使った仕組みを構築したのに、急に展開できなくなった…」ということも起こり得ます。

このように、画像認識で個人情報を取り扱う際には、国内・海外を問わず、国や自治体の方針・規則に左右される可能性があるという点は今後の課題とも言えるでしょう。

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画像認識が抱える課題への対応策は?

画像認識が抱える課題への対応策は?

AIによる画像認識にはいくつか課題も残されていますが、画像認識の技術をビジネスや身の回りの生活に取り入れることで、多大なるメリットが得られるのも事実です。

そこで、AIによる画像認識を上手く活用するために、画像認識が抱える課題への対応策についてまとめていきます。

導入時のポイント・注意点にもなりますので、画像認識を自社のビジネスに活用できないかと導入を検討されている方はぜひ参考にご覧ください。

課題への対応策①:導入の目的を明確化する

画像認識を行う場合、AIが学習するための適切な画像データを大量に準備する必要がありますが、その大量の学習データを準備するのに、多くの労力やコストがかかってしまう点が課題の一つとなっています。その労力やコストを抑えるためには、ビジネスの課題や目的を明確化することが重要となります。

確かに、画像認識では、AIの学習データが多ければ多いほど精度は向上しますが、目的や用途によって必要となる処理精度は異なります。最近では、この課題を解決するために学習データをCGで作成するという潮流もありますが、まずは、

「何を解決するために画像認識が必要なのか」
「具体的な目標地点はどこなのか」
「目的のためにはどの程度の精度が必要か」

…など、画像認識の仕組みを導入する目的・目標地点を明確化させて画像認識にどの程度の精度を求めるかを精査することで、必要以上の労力やコストを抑えるなどの対応が可能となります。

課題への対応策②:プライバシー保護をガイドライン化する

画像認識を活用する際にプライバシー保護にどう取り組むかという課題については、プライバシーポリシーをガイドライン化し、場合によっては画像認識の仕組みに組み込んでおくことも大切です。

近年では、プライバシー保護の観点からデバイス内で処理ができる“エッジAIカメラ”を活用する動きも広まっています。エッジAIカメラなら撮影したデータをそのまま端末内のAIが処理し、処理後は元データを破棄することで、外部へのデータ流出を防ぐことも可能。個人のプライバシーに関わる画像を取得する必要があるケースにおいては、エッジAIカメラを上手く活用することでプライバシーへの配慮も行うことができます。

なお、個人情報が漏洩してしまうケースには、外部からのハッキングや従業員の過失のほかに、内部から意図的に情報を漏洩させるケースもゼロではありません。ですので、社内の従業員に対するITリテラシー教育やデータ取り扱いに関するルールの策定だけでなく、セキュリティシステム自体を何重にも強化・管理するなど、セキュリティの専門知識を持った人間によるリスクマネジメントが非常に重要となります。

課題への対応策③:重要な判断は最終的に人間が行う

AIによる画像認識では、処理過程が複雑化してしまうことが多く、どのような過程でその判断を下したのか、原因を読み解くことが難しいという課題があります。

そのような根拠のブラックボックス化に対しては、今後、判断基準の透明性を確保することができるような仕組みの構築やルール化が求められていくと思われますが、現時点では、AIの出した結果を参考にはしつつ、あくまでも最終的な判断は人間が行うのがベストです。

AIのアルゴリズムは人間の脳の仕組みに似た仕組みとなっていますが、だからと言って人間と同じ思考力や倫理観を持っている訳ではありません。AIはあくまでも最も合理的だと思われる判断を下します。そのため、その結果が全て人間の望む答えになっているとは限らず、人間が意図しないうちにプライバシーを侵害していたり、倫理観に反する判断を下してしまっていたりする可能性もゼロではないのです。

ですので、重要な判断においてはAIに任せきりにせず、人間側でコントロールすることが非常に重要となります。

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課題への対応策④:画像認識の専門家に相談する

ビジネスの課題解決のために画像認識の技術を導入しようと検討されている方は多いかと思いますが、用途や目的によっては導入前の課題も多く、さらに分析後のデータを十分に活かすためには専門知識も必要となります。

もし社内にAIや画像認識に関する知識のある人材がいない場合は、外部に自社の業務にはどの程度の処理精度が必要か、それを実現するためにはどんな仕組みが必要かなどを安心して相談できる専門家を作っておくことも大切です。

最近では、システムの導入からデータ分析・活用までを一貫してサポートが可能なサービス・ツールを提供している会社もあります。システムの導入に不安がある場合は自社だけで何とかするのではなく、最短距離でビジネスの成功を実現させるためにも、一度専門家に相談してみると良いでしょう。

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