2024年09月5日
エッジコンピューティングとは?メリット・デメリット・代表的な活用例などをわかりやすく解説!
技術の進化により、既に広く一般に活用されているクラウド技術。しかし、クラウドの活用が進むにつれてデータの通信量が増大するとともに、それに伴うネットワークの遅延などが課題となっています。
そこで、それらの解決策として注目を集めているのが、「エッジコンピューティング」と呼ばれる手法です。
今回は、そのエッジコンピューティングとは何か、クラウドコンピューティングとの違いをまとめるとともに、エッジコンピューティングの導入におけるメリット・デメリット、代表的な活用例について、わかりやすく解説していきます。
目次
エッジコンピューティングをわかりやすく言うと?
「エッジコンピューティング」とは何かをわかりやすく言うと、IoT端末やその近くに配置されたサーバーでデータの処理を行う分散コンピューティングの手法のこと。
端末で取得したデータをクラウド上のサーバーに送信してから処理するのではなく、データを取得した現場でそのまま処理・分析を行い、処理後の必要なデータのみをクラウドに送信するのが特徴。リアルタイム性に優れているほか、通信によるネットワークの負荷や遅延を軽減することができます。
このエッジコンピューティングを活用することで、企業においては業務の効率化やコスト削減などが期待できるため、製造業や小売業、医療や介護など、既に幅広い分野での活用が始まっています。
関連記事:「IoTにおけるエッジコンピューティングとは?その特徴や課題について解説」
エッジコンピューティングとクラウドコンピューティングの違いとは
エッジコンピューティングの比較対象とされるのが、クラウドコンピューティングと呼ばれる手法です。
エッジコンピューティングは、エッジデバイスと呼ばれる端末機器で取得したデータをそのまま端末内で処理し、必要なデータのみをクラウドサーバーに送信する仕組み、わかりやすくまとめると「分散処理型」の手法だと言えます。それに対してクラウドコンピューティングでは、端末機器で取得したデータは全てクラウドサーバーに送信、クラウド上で処理を行う「集中処理型」の仕組みとなっています。
データ処理を行う場所に大きな違いがあるのはもちろんですが、特にエッジコンピューティングでは、使用するエッジデバイスのスペックによって処理できる内容・容量などが影響されるため、リアルタイム性を重視するならエッジコンピューティング、大きな記憶容量が必要な場合はクラウドコンピューティング…など、用途やそれぞれの特徴に合わせて使い分ける必要があります。
エッジコンピューティング導入のメリットをわかりやすく解説
メリット①:コストの削減
クラウドコンピューティングでは、端末で取得したデータをクラウド上のサーバーに集約して処理を行う仕組みとなっています。そのため、データ量や環境によっては多くの通信費がかかってしまうことがあります。
それに対してエッジコンピューティングでは、インターネットを経由して全てのデータをクラウドサーバーに送信しなくても、データを取得した端末内でそのまま処理を行って必要なデータのみをクラウドに送信するため、通信費を抑えることが可能となります。
また、処理を分散させることにより、必要なサーバー台数も少なく済むため、サーバーリソースを用意するコストやサーバー管理に必要な人件費などを削減することも可能。機器導入後は、クラウドコンピューティングよりも費用面でのメリットを感じることができるでしょう。
メリット②:リアルタイムでの処理
処理のリアルタイム性もエッジコンピューティングのメリットの一つです。
クラウドコンピューティングの場合、ネットワークを介して全てのデータをやり取りする仕組みであるため、そもそもデータの送受信にかかる遅延時間(レイテンシ)が発生するほか、データ量によってはネットワークの混雑による遅延のリスクも存在します。
しかし、エッジコンピューティングでは取得したデータをその端末内、もしくは近接して設置したサーバーで処理するため、クラウドコンピューティングの仕組みよりも通信距離が短縮。それにより通信速度や処理速度が向上するため、リアルタイムでの応答が可能になります。ですので、例えば車の自動運転システムやスマート工場など、リアルタイム性を重視する分野で有効な手法となっています。
メリット③:ネットワーク負荷の軽減
エッジコンピューティングには、ネットワーク負荷を軽減することができるというメリットもあります。
収集した全てのデータをクラウドサーバーに送信するクラウドコンピューティングとは異なり、エッジコンピューティングでは必要なデータのみを送信することで通信量そのものを削減することが可能。通信時のネットワーク負荷を軽減することができます。
特に近年では、IoTの進化によって通信量の増加が懸念されています。そんな中、エッジコンピューティングであれば、必要最低限の通信量に抑えることができるため、使用できるネットワークに制約があるケースやアクセスが集中しやすい時間帯などでも、ネットワーク負荷による通信遅延を回避する効果が期待できるのです。
メリット④:情報漏洩リスクの軽減
エッジコンピューティングでは端末内で処理し、ネットワーク上に送信するのは必要なデータのみ。つまり、ネットワークを介して外部に送られるデータ量は必要最低限となるため、万が一の場合でも、情報漏洩における被害を最小限に抑えることができるのもメリットの一つだと言えます。
また、使用するエッジデバイスの設定によっては、処理が終わった後のデータをすぐさま削除することも可能。もう少しわかりやすく言うと、AIカメラで撮影した映像に写った人物の個人情報や企業の機密情報なども、必要な分析だけ済めば端末内で削除することができるため、個人のプライバシーに配慮できるだけでなく、通信時のセキュリティリスクを抑えることもできます。
メリット⑤:BCP対策の強化
エッジコンピューティングは、企業のBCP対策にもなるという点もメリットの一つだと言えます。
BCP対策とは、自然災害やテロ攻撃などの緊急事態が発生した際に、企業が事業の継続や早期の復旧ができるように「事業継続計画(BCP)」を立て、あらかじめ備えておくことを指します。
エッジコンピューティングを活用すれば、有事の際でもエッジデバイス単体で作業を継続させるなどの対応が可能であることから、企業のBCP対策の一つとして活用することもできます。
エッジコンピューティングのデメリットをわかりやすくまとめると?
デメリット①:機器や保守管理にかかるコスト
メリットの部分で通信費や人件費のコスト削減についてお話した通り、コストが削減できる部分もありますが、その一方で、エッジコンピューティングでは導入の際にエッジデバイスを複数設置する必要があるため、その際の機器の導入・設置費用はかかってしまいます。
また運用面においても、多数のエッジデバイスを設置するのであれば、その分の管理システムやメンテナンスなどにも費用がかかるため、初期費用だけでなく運用時のコストを算出した上で導入計画を練ることが大切です。
デメリット②:デバイス管理が煩雑
多数のエッジデバイスを利用するエッジコンピューティングでは、端末の数が増えれば増えるほど、管理が煩雑になるという点もデメリットになります。
例えば、端末内にインストールされているアプリのバージョン。数台程度なら担当者が現地で一つ一つバージョンを確認してバージョンアップして…ということが簡単にできますが、日本中の店舗や施設に多数の端末を設置している場合、人の手で管理していくというのは現実的ではありません。端末ごとにアプリのバージョンだけでなく、設定や電源のオン・オフなど、環境がバラついてしまうこともあるため、デバイス管理が非常に複雑化してしまうという点は、エッジコンピューティングの課題とも言えるでしょう。
ですので、エッジコンピューティングを導入する際には、あらかじめ遠隔から一括して端末を管理することができるデバイスマネージメントシステムを利用するなど、煩雑化しやすいデバイス管理について対策を立てておくのをおすすめします。
デメリット③:データの欠落リスク
クラウドコンピューティングでは、全てのデータをクラウドサーバーに送信してしまうため、処理内容やデータ容量に合わせてサーバーを増設するなどの対応が可能です。
しかし反対に、エッジコンピューティングに利用されるエッジデバイスでは、端末に搭載できる容量に限りがあるため、処理後の不要なデータは削除するという設定にしておくのが一般的。その際に、何らかの理由で本来必要であったデータまで消失してしまうといった可能性もゼロではないため、あらかじめデータ欠落のリスクについては理解しておくことが大切です。
デメリット④:エッジデバイス自体のセキュリティティリスク
エッジコンピューティングでは、多数のエッジデバイスを利用してデータの取得・処理を行いますが、インターネットを介している以上、サイバー攻撃やマルウェアなどの脅威はゼロではありません。
エッジデバイスの中には、セキュリティ対策が限定的、もしくは対策されていない製品もあります。そのため、ネットワークを経由して外部から攻撃を受けないようにセキュリティを強化しておく必要があるほか、エッジコンピューティングを導入する際には十分なセキュリティ対策が施されている製品を選ぶことが大切です。
また、エッジデバイスは小型で軽量なものも多いため、物理的な盗難や破壊などの可能性もあります。
ネットワーク上のサイバー攻撃やマルウェアに対するセキュリティ対策を十分に行っていたとしても、エッジデバイスであれば人の手で直接情報を抜き取ったり、マルウェアを仕込まれたりといったことができるケースもあるため、端末そのものを保護する対策を講じる必要がある点も課題の一つだと言えます。
エッジコンピューティングの代表的な活用例
エッジコンピューティングは既にさまざまな分野での活用が始まっています。
ここからはエッジコンピューティングの代表的な活用例について、わかりやすくご紹介します。
オフィスや施設の入退室管理
オフィスや各種施設で利用されている顔認証による入退室管理システムも、エッジコンピューティングの活用例の一つです。
従来では、ICカードをタッチして鍵を開錠するなどで管理を行うのが一般的でしたが、ICカードの紛失や貸し借りによるなりすましのリスクは避けては通れない課題となっていました。
そのような場合に有効なのが、顔認証による入退室管理システムです。
AIカメラをドアやゲートなどに設置し、あらかじめ関係者を登録しておくことで、通過する際に登録された人物かどうかを瞬時に判断することが可能に。目視で確認するよりも安定した精度で入退室管理ができるため、セキュリティの強化に役立っています。
自動運転
エッジコンピューティングは、自動運転システムにも役立てられています。
車の自動運転では、安全に走行するために状況に合わせて瞬時に正確な判断を下す必要がありますが、そのようなリアルタイム性が求められる際に活躍するのがエッジコンピューティングの仕組みです。
自動運転システムでは、AIカメラやセンサーを使って道路標識や歩行者などをリアルタイムで処理・判別し、周囲の環境に合わせて適切な運転をサポートしてくれる仕組みとなっています。
スマート工場
製造業におけるスマート工場にも、エッジコンピューティングの仕組みは活用されています。
製造工場は24時間稼働し続ける工場も多く、さらにスマート工場においてはあらゆる機器からのデータを収集するため、膨大なデータを処理する必要があります。しかし、エッジコンピューティングによって処理を分散させることで、効率的なデータ処理が可能に。
特にリアルタイムでの検出が必要となる検品作業などの生産・品質管理業務や、設備の保守管理業務などにおいて大きな活躍を見せています。
関連記事:「製造業におけるIoT導入のメリット・活用方法は?生産現場での活用事例をご紹介」
マーケティング
エッジコンピューティングは、商業施設や小売店におけるマーケティングにも活用されています。
例えば、AIカメラを利用することにより、来店客の年齢や性別などの顧客属性やエリア内の動線・行動パターンのほかに、店内が混雑する時間帯の把握などが可能に。それらのデータを分析することで、客層に合わせた商品の仕入れや売り場作りができるだけでなく、売場レイアウトの変更やPOPなどの広告効果を見える化することもできるようになります。
テータの取得から分析までが効率化できるだけでなく、従来のマーケティングでは難しかった施策のデータが取得できるようになるなども大きなメリットとなっています。
関連記事:「マーケティングを効率的に!AIカメラによる顧客分析で店内・サービスを最適化」
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