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2023年12月19日

  • コラム

「物体検出」とは?AIによる画像認識に欠かせないその手法と活用シーンについて解説

「物体検出」とは?AIによる画像認識に欠かせないその手法と活用シーンについて解説

私たちの身の回りでも活用が進んでいるAIによる画像認識。中でも「物体検出」と呼ばれる技術は、IT企業だけでなく製造業や小売・サービス業、さらに近年では農業や医療の現場など、幅広い分野で活用されています。

そこで今回は、AIによる画像認識に欠かせない物体検出の概要をまとめるとともに、物体検出の代表的な手法や活用シーン、ビジネスの現場における実際の事例などをご紹介します。

画像認識における物体検出とは

「物体検出(物体検知)」は画像認識の一つで、取り込んだ画像の中から特定の物体の「位置・種類・個数」を検出する技術のことを指します。

例えば人間であれば、画像を見て「この画像に猫が写っている」「画像の端に人が2人いる」など、過去の経験から物体が何であるか、画像のどの位置にあるか、数はどのぐらいかを即座に判断することができますよね。その仕組みをコンピューターで再現したのが「物体検出」と呼ばれる技術です。

画像内の物体の種類を判別すること自体は、「画像分類」と呼ばれる技術でも可能なのですが、物体検出では、そこからさらに、

・対象物の位置の絞り込み
・対象以外の物体の排除

…といった処理を追加で行うことで、画像内における物体の位置や個数まで検出することができます。

この物体検出の技術は、工場での外観検査や病院での画像診断、建設現場での安全確認といった幅広い業務で活用されているほか、特に近年では、車の自動運転やスマートフォンカメラの顔検出など、私たちの生活の身近なところでも活躍を見せており、今後ますます重要な役割を担っていく技術だと言えるでしょう。

画像認識における物体検出の主な手法は?

画像認識における物体検出の主な手法

画像認識技術の中でも幅広い分野で活躍を見せる「物体検出」。

この物体検出では、ディープラーニングで用いられる「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」と呼ばれる技術を利用して処理するのですが、その手法にも様々な種類があります。

では具体的に、どのような手法があるのでしょうか?ここからは、画像認識における物体検出の代表的な手法についてまとめていきます。

R-CNN(Regional CNN)

ディープラーニングを利用した物体検出の先駆けとも言えるのが、R-CNN(Regional CNN)と呼ばれる手法です。

このR-CNNは、従来の物体検出モデルをCNN(畳み込みニューラルネットワーク)に置き換えたもので、入力された画像データの中から物体が写っているバウンディングボックスと呼ばれる領域を約2,000個抽出、それぞれの特微量を計算することにより、それらの領域に何が写っているかを分類します。

この手法により、ディープラーニングを用いていない従来の手法よりも高い精度で物体検出が可能となりました。

ただ、その一方でR-CNNには、コンピューターの学習時間が多くかかってしまう上にメモリ消費量も大きいという課題があります。それらを解消すべく登場したのが、「Fast R-CNN」「Faster R-CNN」「Cascade R-CNN」などの派生手法です。これらによってCNNの処理方法を改善することで、学習時間やメモリ消費量が大幅に削減されました。

YOLO

YOLOとは「You Only Look Once」の頭文字をとった造語で、人間のように一目見ただけでその物体が何かを判別できるという意味を指しています。

このYOLOと呼ばれる手法では、あらかじめ画像全体をグリッドで分割しておくことで、それぞれの領域ごとに物体の種類と位置を同時に判別します。

R-CNNのように画像データの中から約2,000個の候補を個別に探していくのではなく、「YOLO」という名前の意味の通り、画像を一度スキャンしていくだけで検出と識別の2つの処理を同時に行うことができるため、処理速度が非常に速いという特長を持っています。

SSD

SSD (Single Shot MultiBox Detector)は、YOLO同様に処理速度が速く、精度もFaster R-CNNと同程度と、2つの手法の良いところを取ったアルゴリズムです。

物体検出を行う際にはYOLOと同じ手法を用いますが、画像を等間隔で分割するYOLOとは異なり、SSDでは形やサイズの異なる領域を複数使用して物体の位置を予測していきます。

YOLOには、画像内に多数の物体が写っている場合や小さな物体である場合に精度が低くなるという欠点がありますが、このSSDであればサイズの異なる領域を用いてバウンディングボックスを予測するため、小さな物体や元が低解像度の画像でも物体検出が可能となります。

DETR

DETR(DEtection with TRansformers)とは、初めて“Transformer”と呼ばれる機械学習モデルを利用した物体検出の手法です。

Transformerは、もともと翻訳などで使われる自然言語処理の手法として登場したものですが、このTransformerを物体検出に応用することで、これまで課題となっていた人の手による調整や複雑な仕組みをなくし、シンプルな構成でありながら前述のFaster R-CNNと同程度の精度での物体検出が可能となりました。

DCN

DCNは、物体検出を行う際に用いるグリッドの形状を変えることで、バウンディングボックスだけでは検出できなかった形状の物体を検出可能にした手法です。

例えば、実際に物体検出に用いる画像には、対象の物体が切れていたり撮影角度によっては変形してしまっていたりするものがあります。このような時、CNNでは矩形グリッドの形状によって検出精度に制約が出てしまうため、異常な形状の物体を検出するのは難しかったのですが、DCNであれば、グリッドの形状を変えることで物体の変形に対応することが可能となっています。

HOG

HOG(Histogram of oriented gradient)とは、物体の向きや傾きが変わっても変化のない部分を抽出して物体検出を行う手法のこと。画像に写った物体の不変的な特徴を抽出する「SIFT(スケール不変特徴量変換)」と呼ばれる手法を利用し、領域内の特徴量の勾配を使って物体の形状を認識していきます。

画像内の物体の大きさや形状が異なっていても正しく特徴が検出できるため、主に、顔認証や車両検出などに活用されています。

関連記事:「画像認識にはどんな種類がある?画像認識における代表的な技術と活用方法とは

画像認識における物体検出の活用シーン

画像認識における物体検出の活用シーン

数ある画像認識の手法の中でも、物体検出の技術はビジネスシーンにおいて幅広い分野で活用されています。特に、近年ではAIカメラにおいても欠かせない技術となっており、今後もますます活用シーンが広がっていくものと思われています。

では、実際に物体検出の技術は、どのようなシーンで活用されているのでしょうか?
ここからはAIを用いた物体検出の活用シーンについて、いくつか代表的なものをご紹介します。

工場などでの異常検知

画像認識の分野においては物体検出の技術を活用することで、異常検知が可能となります。

例えば、従来は目視で行われていた工場での検品作業。この検品作業に物体検出の技術を用いたAIカメラで外観検査を行えば、自動的に不良品やパッケージの汚れを検知することができるため、業務効率化が可能となります。

また工場のほか、建物の外観検査や危険なエリアでの作業などにおいても、AIカメラを活用することで遠隔からでも異常を検知することができるため、従業員の安全を確保することも可能です。

顔認証システム

前述の「HOG」の説明の際にも触れましたが、物体検出の技術は顔認証のシステムにも活用されています。

例えば、スマートフォンやパソコンの顔認証は皆さんにも馴染みがあると思いますが、その他にも、オフィスや研究所などでは、あらかじめAIカメラで入退室が必要な人物の顔認証を行っておけば不正侵入を防ぐことも可能。さらに、人物ごとの入退室履歴を記録するだけでなく、リアルタイムで在室状況の確認もできるため、入退室管理の自動化も実現します。

物体追跡による防犯・監視

物体検出の技術は、防犯面においても活用されています。

例えば、店舗やビルなどに設置されている防犯・監視カメラ。従来のものであれば映像内に何らかの変化があった際に異常として検知する仕組みとなっていたのですが、AIによる物体検出の技術を活用することで、映像内の物体を個別に識別して追跡(オブジェクトトラッキング)することが可能となるため、異常を検出するだけでなく、検出した物体・人物を追跡することができます。

市場調査・商品管理

AIカメラを用いた物体検出の技術は、小売店や商業施設などにおける市場調査や商品管理にも活用されています。

物体検出の技術で顧客を識別することで、来店客をカウントするだけでなく顧客の動線や滞在時間を計測したり、駐車場の車のナンバーから商圏や顧客層を分析するなども可能。さらに、AIカメラで商品棚を撮影してその変化を解析することで、売れ筋商品の分析ができるほか、商品数を把握して欠品を知らせるなど、小売店などでは商品管理にも役立てることができます。

車の自動運転

年々、進化を遂げている車の自動運転にも、AIカメラを用いた物体検出の技術が活用されています。

自動車にAIカメラを搭載して、信号や標識、歩行者などを検出。周囲の状況をコンピューターが把握することで、人に変わって適切な運転を行います。

医療における画像診断

医療の分野では、画像診断に物体検出の技術が活用されています。

物体検出の技術を活用することで、レントゲン写真やCT・MRIなどの医療用画像から病巣を検出することができるため、AIが自動的に病気の疑いがある箇所を抽出して医師の診断をサポートすることができるほか、従来では難しかったがん細胞の早期発見なども可能になっています。

また、これまで担当医師の経験や知識によって精度がバラついてしまっていた診断結果も、AIを活用することによって診断精度が向上するため、医療分野においても更なる研究が進められています。

関連記事:「画像解析でできることとは?具体的な活用シーンやビジネスでの導入事例

画像認識における物体検出の活用事例①

画像認識の中でも幅広い分野で活躍を見せる物体検出の技術ですが、実際のビジネスの現場ではどのように活用されているのでしょうか?

ここからは、工場・店舗・オフィス・介護施設など、様々な分野での実績を誇る私たちVieureka(ビューレカ)のAIカメラを使った実際の活用事例からいくつかご紹介しますので、ぜひビジネスの参考にご覧ください。

画像認識における物体検出の活用事例①:入退室管理

画像認識における物体検出の活用事例①:入退室管理

出典:ビーコア株式会社様「入退室管理システム」より

こちらは入退室管理システムにAIによる物体検出の技術を活用した事例です。

衛生管理が義務化されている食品工場では、「いつ・どこの部屋に・だれが入ったのか」などの詳細な管理が必要となりますが、この入退室管理システムでは、カラービット入館証の検出からクラウドへのデータ送信までの全てをAIカメラが自動で処理するため、入館証を手でかざしたり入退室の度に帽子やマスクを外したりといった必要がなく、ハンズフリーで出入り口を通過することが可能となっています。

ハンズフリーを実現したことで、衛生面における課題を解決するほか、入退室管理の煩雑さを大幅に軽減することができるため、現在では、食品工場だけでなく幅広い業種でこの物体検出の技術を活用した入退室管理システムが活用されています。

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画像認識における物体検出の活用事例②:不良品検知

画像認識における物体検出の活用事例②:不良品検知

出典:株式会社KYOSO様「IoT.kyoto」より

株式会社KYOSO様とトーア紡マテリアル株式会社四日市工場様の研究開発の一環で行われた不良品検知の検証実験にもAIによる物体検出の技術が活用されています。

こちらの事例では、もともと作業員が目視で行っていた検品作業の効率化を目的として、AIカメラで不織布の不良品検知が可能かを検証。表面の汚れや異色繊維の飛び込みなどの不良がないか、リアルタイムで検品状況を数値化して確認できるように設定し、異常を検知した際には通知が送られる仕組みとなっています。

株式会社KYOSO様の事例詳細はこちら

画像認識における物体検出の活用事例③:害虫駆除

画像認識における物体検出の活用事例③:害虫駆除

出典:環境機器株式会社様「Pest-Vision」より
工場や倉庫などの害虫駆除にも、AIによる物体検出の技術が活用されています。

例えばネズミ対策を行う際には、粘着トラップを床や天井裏などに設置し、捕獲の有無によってネズミの定着・侵入を把握するのが一般的ですが、警戒心の強いネズミは人間側が設置したトラップを避けてしまうことがあるため、「捕獲がなかった=ネズミは生息していない」とは断言できないのが課題となっていました。

そのような時に有効なのがAIカメラによる物体検出の技術です。AIカメラを用いてネズミを検出し、遠隔から監視することでクラウドに解析データを集約。ネズミの出現データを可視化すれば、出現頻度が高い現場や出現時間を割り出すことができるため、これまで大きな負担となっていた時間と労力が軽減され、効果的に害虫駆除を行うことができます。

環境機器株式会社様のねずみ検知システム詳細はこちら

AIカメラの導入ならパナソニック発のVieurekaにご相談を!

パナソニックの研究開発部門から発足した私たちVieureka(ビューレカ)は、「世界の今をデータ化する新たな社会インフラを創造」をミッションに掲げ、開発・導入・運用などのハードルを下げるプラットフォームを提供しています。

高性能なCPUを内蔵したエッジデバイス「Vieurekaカメラ」をはじめ、これまで取得できなかった情報をデータ化して活用する「Vieurekaプラットフォーム」や顧客行動や商品の陳列状況をデータ化する「来客分析サービス」など、お客様のご要望に沿った導入のご提案をさせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。