HOME > ブログ > コラム > エッジAIとは?クラウドAIとの違いや自社の課題に合わせた選び方

2023年03月1日

  • コラム

エッジAIとは?クラウドAIとの違いや自社の課題に合わせた選び方

エッジAIとは?クラウドAIとの違いや課題に合わせた選び方

近年、製造業や小売業、医療や交通システムなど幅広い分野で活躍の場を広げるAI(人工知能)ですが、中でも注目されているのが「エッジAI」です。

しかし、AIという言葉は聞き馴染みがあっても「エッジAI」とは何か…詳しくは知らないという方も少なくないはず。

そこで今回は、エッジAIとは何かを中心に、クラウドAIとの違いやそれぞれのメリット・デメリットについて解説。さらに、自社の課題に合わせて使い分けたいエッジAIとクラウドAIの選び方について、分かりやすくまとめていきます。

エッジAIとは?

エッジAIとは、カメラやスピーカーなどの“エッジデバイス”と呼ばれる端末に人工知能(AI)を搭載し、端末内でAIによる学習・推論を行う仕組みのことです。

現場に設置した端末内でAI処理ができるため、工場での検品作業や機器の制御、自動車運転や福祉施設における事故防止など、リアルタイムでの判断が必要になるシーンで、エッジAIが導入されるケースが増えています。

エッジAIとクラウドAIの違いとは

「エッジAI」に対応するものとして、「クラウドAI」があります。「クラウドAI」とは、端末側にAIが搭載されているエッジAIとは異なり、その名の通りクラウド上に搭載されたAIが学習や推論を行うシステムのことです。

クラウドAIは、カメラやスピーカーなどの端末側からインターネット回線を通じてデータを送信、データセンター内のCPUやGPUを使って処理を行います。AI処理に必要な計算リソースを必要に応じて拡張できることから大規模なデータを扱うこともでき、高度な計算や複雑な判断をすることができるのが特徴です。

エッジAIとクラウドAIは、それぞれシステム構造の違いにより得意分野も異なりますが、最近では、両方を組み合わせて使うハイブリッド型での活用も一般的です。用途や目的に合わせて、それぞれのシステムが持つメリットを最大限に活かすことで、これまで以上に幅広い業種・シーンでの活躍が見込まれています。

エッジAIのメリット・デメリットとは

エッジAIのメリット・デメリットとは

エッジAIは、端末内でAI処理を行うことができるという点で多くのメリットがあります。
ここでは、それらの具体的なメリットについてご紹介するとともに、メリットとあわせて把握しておきたいデメリットについてもまとめていきます。

エッジAIのメリットとは

端末のみで使用できる

エッジAIの最大のメリットは、エッジデバイスとも呼ばれる端末機器のみで使用できる点です。

従来の監視カメラなどのようにパソコンやモニター、それに伴う配線などの設備を準備する必要がなく、システムの規模を拡大する際にも、端末を増やすだけで完了します。さらに端末を増やしても、処理は端末内で完結するため、数が増えてもシステム負荷の影響が小さいこともメリットだと言えます。

また端末ごとの推論の学習データを変えることも可能であるため、設置場所や環境に合わせた最適なデータ取得が可能となります。

端末側で処理するため、リアルタイムでの判断ができる

エッジAIは端末側でAI処理を行うため、データ解析から判断を出すまでのタイムラグがないことがメリットの一つです。

端末側で収集したデータをクラウドに送信してAI処理をするクラウドAIであれば、通信によるタイムラグが生じますが、エッジAIであればその場で判断できるため、即時対応が必要な自動車の自動運転や機器の制御などの用途に対応が可能です。

通信コストが削減できる

エッジAIは端末内でAI処理したデータの内、必要なものだけをクラウドに送信するため、全データをクラウドに送信するクラウドAIに比べて通信データ量が大きく抑えられるため、通信コストの削減ができるという点もメリットとなります。

またエッジAIは、通信量が少ないことで通信帯域が狭くても影響を受けづらいという特徴もあり、設置場所の選択肢が多いのもメリットだと言えます。

情報漏洩のリスクが軽減できる

エッジAIは、端末内でAI処理を行うことで全てのデータを送信する必要がないため、情報漏洩のリスクが軽減できるというメリットもあります。

端末内部でAI処理が完了すれば、そのまま取得した元データを破棄することもできるため、例えば、街頭や店舗内で撮影された人物のプライバシーに配慮できたり、オフィスや工場内の情報が漏れてしまったりというリスクを軽減します。

精度の高い処理が可能

エッジAIはクラウドAIと比べると、場合によって処理精度が上がることがあるという点も、精密な処理を求める場合にはメリットの一つになります。

一般的に端末からクラウドにデータを送る際は、画像・映像などの容量が大きいものは圧縮処理を行いますが、その際にNW帯域次第では画質が落ちることがあります。クラウドAIの場合、その圧縮して送信された画像を使って処理するため、精度が落ちることがありますが、エッジAIの場合は圧縮前の元の画像を使うことができるため、クラウドAIより処理の精度が上がることがあります。

エッジAIのデメリットとは

処理能力に限界がある

エッジAIは端末のみで使用できるというメリットがある反面、端末に搭載できるリソースには限りがあります。

そのためエッジAIでは、端末のスペックによって大容量のデータを処理したり、高度で複雑な処理を行ったりするのが難しい場合があります。さらに、端末の性能向上をしたい場合は、新機種を開発する必要があるというのもデメリットの一つになるかもしれません。

システムが複雑化しやすい

エッジAIは端末側にAIを搭載するため、システムアップデートの際には端末ごとにアップデートしたソフトを入れる必要があり、保守・運用が複雑化しやすいという点にも注意が必要です。

エッジAIのシステムによっては一括管理も可能ですが、端末側の電源が入っていなければ一括でアップロードすることができないため、現場にある端末のバージョン管理や運用が煩雑になってしまう場合もあります。

関連記事:「AIカメラ導入のデメリットは?導入前に知っておきたいAIのメリットとデメリット

クラウドAIのメリット・デメリットとは

クラウドAIのメリット・デメリットとは

ここまでエッジAIに関するメリット・デメリットについてまとめてきましたが、導入前にはエッジAIとあわせてクラウドAIについても理解しておきたいところです。
そこで、ここからはクラウドAIのメリット・デメリットについてまとめていきます。

クラウドAIのメリットとは

大容量で複雑な処理が可能

クラウドAIでは、クラウド上に搭載されたAIがデータを処理するため、大容量のデータの蓄積や高度で複雑な処理ができるのが最大のメリットだと言えます。

さらに、AIによる学習や推論がクラウド上で行われるため、端末やPCなどの機器にかかる負荷を抑えることができます。

システムメンテナンスが簡単

端末にAIが搭載されているエッジAIは、システムアップデートの際には端末ごとにアップデートしたソフトを入れる必要がありますが、クラウドAIはクラウド側にAIが搭載されているため、システムメンテナンスが容易だというメリットがあります。

端末スペックは問わない

クラウドAIは、画像や映像などのデータさえクラウド上に送信することができれば良いので、特に端末側のスペックは高くなくても良いのもメリットです。

また、システム構成や設置場所などの条件はありますが、既に設置してあるカメラなどをクラウドAIの端末として使うことができるため、設置コストを下げる点でメリットの一つになります。

クラウドAIのデメリットとは

ネット環境に処理能力が左右されやすい

クラウドAIでは、インターネットを経由してデータが送信されるため、ネット環境(NW帯域の広さ)にシステムの安定性が左右されやすい点がデメリットとして捉えられることがあります。

クラウドAIでは、膨大な量のデータが送る必要がありますが、もしそれらが安定して送信できなければ処理ができず、遅延が発生してしまう可能性があります。

セキュリティリスクが高まる

クラウドAIは全て端末で処理してしまうエッジAIとは異なり、端末で取得した全てのデータをインターネット経由で送信する必要があるため、管理状態によっては情報漏洩のリスクが高まります。

例えば、エッジAIなら端末内にデータを残したまま放置していても、現場に設置されている端末からSDカードなどの記録媒体を抜かない限りは情報が漏洩することはありませんが、インターネットを経由するクラウドAIでは、世界中のどこからでもハッキングされる可能性があるため、よりセキュリティ管理に細心の注意が必要です。

動作検証に手間がかかる

クラウドAIには、「現場のカメラは安物、既設でも良い」というメリットについてお伝えしましたが、それがデメリットにつながることもあります。

例えば、端末によってはファームウェアのアップデートに伴って接続できなくなったりすることがあり、接続端末ごとに動作確認が必要であるため、数が多い場合には動作検証が非常に手間になります。また、エッジAIのメリットで述べたように、端末がカメラの場合、送信時に圧縮されて画質が落ちることがあるため、端末のスペックによっては処理精度に影響が出る可能性もあります。

規模の拡大に手間がかかる

クラウドAIは、大規模化するにしたがってクラウドのリソースを増強していく必要があるという点はデメリットの一つと言えるかもしれません。

端末内にAIを搭載しているエッジAIなら、端末を増設するだけで規模を拡大することができますが、クラウドAIの場合は端末を増やすだけでは済みません。そのため、クラウドAIを導入する際には、あらかじめスケーラビリティを意識した設計をすることが重要となります。

エッジAI?クラウドAI?迷った時の選び方とは

エッジAIとクラウドAIにはそれぞれ異なる特徴があるため、導入の際には用途や目的に合わせた選び方が必要となります。ここでは、エッジAIとクラウドAIで迷った時の選び方とはどのようなものなのか、それぞれに適したシーンをご紹介します。

エッジAIが適しているシーン

エッジAIとクラウドAIを比較した際に、エッジAIの方が適しているのは、下記のような場合です。

  • できるだけコストを抑えたい
  • 設置場所の通信環境が悪い(NW帯域が狭い)
  • カメラの画像など、元のデータが大容量でそのまま送れない
  • NW通信が従量課金である(LTEなど)
  • プライバシーへの配慮など、元のデータを送りたくない

エッジAIの最大の特徴である端末内でのAI処理という利点を活かすなら、設備投資などのコストを削減したい場合はもちろん、通信環境や通信コストに懸念がある場合などは、エッジAIを選ぶと良いでしょう。

さらに店舗や商業施設など、顧客プライバシーへの配慮を重要視されている場合などは、エッジAI内で処理済みのデータを破棄し、セキュリティリスクを軽減しておくのがおすすめです。

クラウドAIが適しているシーン

エッジAIに対して、クラウドAIに適しているのは、下記のような場合です。

  • 大量のデータを処理したい
  • 音声認識など、元データが圧縮するほどの容量ではない
  • 既設のカメラを使いたい
  • カメラでクラウド録画を行いたい

クラウドAIの強みは、より高度で複雑な処理が可能であるという点なので、大量のデータを処理したい時や、クラウド録画を行う時に適しています。また送信時にデータが圧縮されてしまうため、精細な画像データを必要としない音声認識などもクラウドAIが良いでしょう。

既に設置された防犯・監視カメラなどを活かしてAI処理を行いたいという場合は、クラウドAIが選択肢として残りますが、端末やシステム構成によっては難しい場合もあるため、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

関連記事:「AIカメラにできることは?検知の種類を知って業務の効率化を実現!

エッジAIの導入ならパナソニック発のVieurekaにご相談を!

パナソニックの研究開発部門から発足した私たちVieureka(ビューレカ)は、「世界の今をデータ化する新たな社会インフラを創造」をミッションに掲げ、開発・導入・運用などのハードルを下げるプラットフォームを提供しています。

高性能なCPUを内蔵したエッジデバイス「Vieurekaカメラ」をはじめ、これまで取得できなかった情報をデータ化して活用する「Vieurekaプラットフォーム」や顧客行動や商品の陳列状況をデータ化する「来客分析サービス」など、お客様のご要望に沿った導入のご提案をさせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。